電力ヒューズの特性曲線とは、図1のようなものです。
特性曲線には、何アンペアの電流が何秒間流れるとヒューズが動作するかなどが示されています。ヒューズを選定する際には、この特性曲線を必ず確認します。
しかし、特性曲線の見方に慣れていないと、どこをどう見ればいいのかがわかりにくいかもしれません。そこで、このページでは特性曲線の見方をわかりやすく解説します。
ヒューズの動作の基本前提
まず、特性曲線を見る前に、ヒューズの動作についての次の2つの基本前提を押さえておきましょう。
- 電流が大きいほど短時間で動作する
- 電流が小さいほど動作までに時間がかかる
「言われなくても分かるよ!」という方も多いかもしれませんが、この2つの前提を理解しておくことで、特性曲線の見方がよりわかりやすくなります。
なぜこのようになるのかというと、ヒューズは内部のエレメントが電流によって発生する熱で溶け切れることで動作するためです。電流が大きければより短時間で高熱が発生し、すぐに動作します。
特性曲線の見方
それでは、ここから特性曲線の見方を解説していきます。
縦軸と横軸の理解
まず、縦軸と横軸が何を示しているかを理解しましょう。特性曲線は、図2のように縦軸と横軸を持つグラフとして描かれます。
- 縦軸は時間、つまりヒューズに何秒間電流が流れるかを示しています。
- 横軸はヒューズに流れる電流値を示しています。
ここで注意していただきたいのは、このグラフが対数グラフであることです。
対数グラフは、データの変化をより理解しやすくするために使用されるグラフです。通常のグラフは図3の左側のように軸の目盛りが等間隔です。一方で対数グラフでは右側のように目盛りが1、10、100、1000のように指数的に増えていきます。
対数グラフにする理由は、幅広い値をコンパクトに表示でき、特に急激な変化や指数的な増加・減少を視覚的に捉えるのに適しているためです。
ちなみに、縦軸が電流、横軸が時間を表す場合もあります。これはメーカーによって表記方法が異なるだけで、どちらでも問題ありません。見間違えないように注意するだけで十分です。
特性曲線には3種類ある
次に電力ヒューズの特性には以下の3つの種類があることを理解しましょう。それぞれが異なる情報を示しています。
- 許容特性
- 溶断特性
- 動作特性
許容特性とは?
許容特性とは、ヒューズが劣化しない電流値と通電時間を示した特性です。ヒューズは事故時に大きな電流が流れることで溶け切れて回路を遮断しますが、通常の電流が流れただけで溶けてしまうと困ります。また、溶け切らないまでも内部が劣化してしまっても問題です。許容特性は、この範囲内の電流と通電時間ならばヒューズが劣化しないことを示しています。
溶断特性とは?
溶断特性は、ヒューズが溶け切るまでの電流値と通電時間を示した特性です。ヒューズ内部には図4のように「ヒューズエレメント」と呼ばれる電流を通す導体があり、このエレメントが溶け切れるまでの電流値と通電時間の関係を表しています。
動作特性とは?
動作特性は、ヒューズが溶け切れた後に電流を遮断するまでの電流値と通電時間を示した特性です。「溶断特性と何が違うの?」と思うかもしれませんが、実はヒューズエレメントが切れても、図5のように電流はアーク放電として流れ続けようとします。
アークを消して電流を遮断するまでの時間と電流値の関係を示すのが動作特性です。
ヒューズの目的は電流を遮断することなので、「ヒューズが動作する=電流を遮断する」と覚えておきましょう。
3つの特性から何がわかるか?
電力ヒューズには以上の3つの特性があります。これらを同じグラフに描くと図6のようになります。このグラフをみると、以下のことがわかります。
- ヒューズにどのくらいの電流を流してよいのか?
- ヒューズは度のタイミングで動作するのか?
- ヒューズは何秒で短絡電流を遮断できるのか?
まとめ
では最後に以上の解説のまとめです。
電力ヒューズの特性曲線は、ヒューズがどのように動作するかを理解するための重要な指標です。この曲線を正しく読むことで、適切なヒューズを選定し、電気設備の安全性を確保することができます。
特性曲線を見る際は、縦軸と横軸の意味をしっかり理解し、許容特性、溶断特性、動作特性の3つの特性を把握することがポイントです。これらを総合的に判断することで、ヒューズがどのように動作し、どの程度の電流まで許容されるかを正確に知ることができます。
ヒューズ選定の際には、これらの特性を十分に考慮し、安全かつ効率的な電気設備の運用を目指しましょう。特性曲線を理解しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができ、信頼性の高い設備運用が可能になります。
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