過電流保護継電器は電源系統の短絡時に流れる短絡電流を検知して、遮断器に開放信号を出力する機器です。
例えば◯Aの電流が◯秒流れたら開放信号を出す。といった設定ができます。
設定が適切でない場合は開放しなくても良い遮断器を開放して停電範囲を拡げてしまったり、逆に開放ができず、ケーブルが焼損してしまうなど、事故時の損失を大きくしてしまいます。
このページでは、過電流保護継電器の役割や動作、設置する目的を解説します。
過電流継電器の役割
過電流継電器の役割はケーブルや設備の短絡が起きた際に流れる短絡電流を検知して、遮断器へ開放信号を出すことです。この信号によって遮断器が開放し、故障が起きた箇所を切り離せます。
より分かりやすく単線図で解説します。図1のように電力を変圧器を介して複数の場所に送電しているとします。
このとき図2のように電路で短絡が起きると短絡電流が流れます。短絡電流が流れたままでは危険なので、遮断器を速やかに送開放する必要があります。
過電流継電器はこの短絡電流を検知して遮断器へ開放信号を出します。すると図3のように遮断器が開放して短絡電流を遮断します。
短絡電流を検知して遮断器へ開放信号を出力することが過電流継電器の役割です。
過電流継電器の機能と目的
前述の役割を踏まえると、過電流継電器は遮断器とセットで使用して、故障した回路を開放するのが目的といえます。
しかし回路を切り離すだけであればヒューズでも同じことができます。ヒューズは大電流が流れた際に焼き切れて回路を切り離すものです。
よって過電流継電器には+αの目的があるといえそうです。その目的は上位との保護協調を取ることです。
保護協調とは何かを簡単に説明すると、事故などで短絡電流が流れた系統だけを切り離し、正常な系統には送電したままにする。という考えです。
図解します。図4はとある工場の電源系統の簡略図です。電力会社から受電して工場内の各設備へ電力を送っています。
例えば図5に示す場所で短絡事故が起きたとしましょう。
保護協調が取れていないと図6のように事故が起きた場所に近い遮断器より先に、より受電点(電力会社側)に近い遮断器が開放してしまいます。
すると図7のように工場全体が停電してしまい、本来電力を送れたはずの設備も停まってしまいます。こうなると工場は大損失を被ります。
しかし保護協調が取れていると、図8のように短絡事故が起きた場所に1番近い遮断器のみが開放します。
そのため工場全体が停電せず、損失を最低限に抑えられます。
過電流継電器は設定を適切に行うことで、短絡した系統は切り離し、正常な系統には送電を維持するという目的があります。