このページでは、電源系統の保護協調についてざっくり解説します。「保護協調とはなんなのかさっぱり分からない」状態から、「なるほど、そういうことか!」と思えるように、電気初心者の方向けにわかりやすく説明していきます。
保護協調とは?
保護協調を調べると、一般的に以下のように説明されています。
保護協調とは電源系統の事故を検出して、事故が起きた部分だけを系統から切り離し、健全な系統には電力の供給が続けられるように保護機器の動作時間や動作電流を調整すること。
この説明だけでは分かりにくいですが、家の分電盤をイメージすると理解しやすくなります。
家の分電盤を使った保護協調のイメージ
家の分電盤には、大きなブレーカー(親ブレーカー)が1つあり、そこから複数のブレーカー(子ブレーカー)に分岐しています。(図1参照)
子ブレーカーは、それぞれの回路に電力を供給しており、コンセントや照明、家電などはそこから電源を受けて動いています。(図2参照)
負荷電流とは?
家電などの機器が正常に使用できているとき、その機器が必要とする電流だけが流れます。この電流を「負荷電流」と呼びます。(図3参照)
しかし、例えば水がかかったり、ケーブルが劣化したりすると、機器の内部で短絡(ショート)が発生することがあります。
短絡電流とは?
短絡が発生すると、通常の負荷電流よりもはるかに大きな電流が流れます。これを「短絡電流」といいます。(図4参照)
機器やケーブルには安全に流せる電流の限界があります。短絡電流が流れると、これらが異常に発熱し、火災などの危険な事態を招きます。
ここでブレーカーが活躍します。短絡電流を検知するとブレーカーが落ちて、回路を切断して安全を確保します。このブレーカーが落ちることを「トリップ」といいます。
保護協調の例
さて、ここからが保護協調の話になります。図4を見てください。短絡電流は親ブレーカーと子ブレーカーの両方に流れているので、この両方ともがトリップする可能性があります。しかし、理想的には子ブレーカーだけがトリップするべきです。
なぜなら、図5のように短絡を起こした回路だけが停止し、他の正常な回路には電力を供給し続けられるからです。このように、事故が発生した部分だけを切り離し、正常な部分には電力を供給し続ける仕組みを「保護協調」といいます。
保護協調が取れていない場合
もし親ブレーカーが先にトリップしてしまうと、図6のように家全体が停電します。これが保護協調ができていない状態です。
この状態では、本来切り離すべき部分以外にも影響が出てしまいます。なお、保護協調ができていないことを「保護協調が取れていない」といったりもします。
おわりに
以上が保護協調の簡単な説明です。今回は家の分電盤を例に説明しましたが、実務ではもっと複雑な回路や分岐が含まれ、高圧や特別高圧の系統も考慮する必要があります。今後は、より実務的な観点から保護協調について詳しく解説していきます。
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